早期・中期がんでは、患者さんの多くは西洋医学を選択します。それに合わせて中医による漢方治療を併用することで、症状の軽減だけではなく、腫瘍の進行抑制や腫瘍マーカーの減少が認められています。
「癌」という文字は中国の古文字「岩」などが由来だと考えられます。形状はでこぼこで、固くて移動しない事からです。また、中国の一番古い医書「黄帝内経」の中に、筋癌、腸癌、骨癌などに分類されています。
3000年前から、中国の医者たちががんのことを意識し、中医の治療もおこなったと考えられます。
早期がん、中期がんにおいては、多くの患者さんは西洋医学を選んで治療を受けますが、それに併せてさらに中医治療を受ければ、症状の軽減のみならず、腫瘍の進行の抑制、腫瘍マーカーの軽減も認められています。
中国中医科学院の研究で胃がんⅢ期術後に漢方+抗がん剤の投与より、抗がん剤のみの治療と比べ、生存率や生活の質の向上が認められました。
上海中医薬大学の研究でも原発性肺癌300例に対し、漢方の併用で生存率なども抗がん剤のみと比べ、明らかに優れていると証明されました。
中国中医科学院広安門病院で326例Ⅲ期~Ⅳ期の胃がんに抗がん剤治療をうけた患者に漢方薬併用したところ、骨髄抑制や、うつ、食欲、全身状態の改善が認められました。白血球低下に有効率94%、予防有効率88.9%の結果でした。
さまざまな原因で抗がん治療の適応・効果がない方も、絶望する事はありません。中医のみの治療で、腫瘍が消失したり、脳腫瘍が縮小したりすることがあります。私が中日友好病院で研修期間中、多くの症例が中医治療のみで改善された事を画像診断などで確認されました。
食事療法はがん治療の一環として、とても重要であり、各段階の方に丁寧に説明します。
免疫力アップと腫瘍の再発予防のため、漢方の煎じ薬と鍼灸治療を行います。
化学療法の副作用の辛さにより、治療の継続困難や治療自体を中止せざるを得ない場合が多くあります。漢方と鍼灸治療を組み合わせることで、副作用の軽減が期待できます。
当院では、食事療法+漢方薬+鍼灸治療で偏った体内環境を変化させて、免疫細胞を活性化を図ることでガン細胞と戦える体を作ることめざします。戦える体を作ることで、腫瘍が消失したり、脳腫瘍が縮小したりすることがあります。
当院では、ガンの時期や体調を中医学の弁証論治を使い、現在の状態をしっかりと把握することに努めています。正しい体質診断が、正しい薬の処方を導き、治療効果を高めるキーポイントになります。
他の漢方を出す所では、診断は西洋医学に完全に委ねて、症状から体を補う薬だけを出したり、中医の診察である四診(見る・かぐ・聴く・触る)使わず、体質診断に情報が欠けるような場合が散見されます。
他の漢方を出す場所では、どのようなステージでも十全大補湯や補中益気湯などの「体を補う薬」を使う事がほとんどです。抗がん剤の副作用軽減に対する併用であれば有効ではありますが、ガンに対しての治療には効果が薄くなると考えられます。そして、中国での体を補う薬とガンとの関係の分析では、安易な「体を補う薬」の過剰使用はガン細胞を強くする可能性があることもあります。
また、抗ガン作用がある生薬の使用でも、体質に合わなかったり過剰使用などがあった場合は病状が悪化します。
当院では、弁証論治で判断した一人一人の体質に合う“体を補う薬+ガン細胞に有効な薬”を組み合わせた生薬の煎じ薬を提供します。しっかりと弁証論治をすることにより、体を補う薬や抗ガン作用のある薬を適量に処方することが可能になります。
水一つを採っても、冷たい水を飲みお腹を壊す人と壊さない人がいるように、それぞれの人の体質は異なるので、より体に合わせた治療が必要なのです。
さらに、医療用や一般漢方薬にはガンの治療に期待できる抗ガン作用の薬が少ないため、生薬の組み合わせを使うことで抗ガン作用を含む処方が可能となります。
免疫細胞を含む正常な細胞が有利になるように体内環境を調整して、免疫細胞が元気になるようにしてガン細胞と戦う力をつけます。
漢方の生薬自体が含む抗ガン作用により、直接ガンに働きかけます。
適切な診断と適切な漢方薬の組み合わせにより、一番体の状況に合った漢方薬の効果を発揮することができます。
高麗人参・冬虫夏草・霊芝などの生薬は、単一の使用ではさほど抗ガン作用が期待できません。他の薬と体質に合わせて出すことにより効果が発揮されます。
漢方の正確な組み合わせにより癌になりやすい体質、癌細胞が増殖しやすい体内環境の一部を変えられたことが証明されました。実際の臨床現場で、その方の病状・体質にあわせ、処方すれば、より一層の効果が期待できます。
中国で多くの方が優れた中医(漢方+鍼灸)先生の元で元気になった姿を見て、初めて癌治療にも通用すると確信しました。中国で学んだことを、日本人の体質にあわせ、みんなさんの元気な姿を見られたらいいと思います。
中国中医科学院の研究で胃がんⅢ期術後に漢方+抗がん剤の投与より、抗がん剤のみの治療と比べ、生存率や生活の質の向上が認められました。
上海中医薬大学の研究でも原発性肺癌300例に対し、漢方の併用で生存率なども抗がん剤のみと比べ、明らかに優れていると証明されています。
中国中医科学院広安門病院で326例Ⅲ期~Ⅳ期の胃がんに抗がん剤治療をうけた患者に漢方薬併用したところ、骨髄抑制や、ウツ、食欲、全身状態の改善が認められました。白血球低下に有効率94%、予防有効率88.9%の結果でした。
上の線は西洋治療+漢方QYHJ併用の生存率
下の線は抗がん剤・TAEなど西洋治療のみ
漢方の併用より明らかに生存率の改善が確認されました。
(QYHJ:刘鲁明教授のグループが長年の臨床と研究を重ね、膵臓・肝臓がんに有効を示した漢方薬の清膵化積湯のこと)
16例 3回/2週 NRS倦怠感と痛みの測定によると改善が見られました。
考察:終末期の倦怠感に対して、鍼治療は安全で有用な介入であることが示唆されました。倦怠感に対して影響する可能性のある薬物投与や物理療法などの新規開始をせずに研究を行っています。
2011年12月から中日友好病院中医腫瘍科などで研修をしました。中日友好病院中医腫瘍科は、中国の中医によるがん治療の最前線で、2011年に中国衛生部(日本の厚生労働省にあたる)より中医腫瘍治療の拠点専門科のひとつとして選ばれました(中国全土で5つの中医腫瘍科のみ選出された)。
師事した先生の一人は張代釗先生です。84歳とはとても思われない位お元気で、中国中医研究院の勤務経験もあり、がんに効く生薬を中心に研究されました。当時の逸話も診察の合間によく話してもらいました。60年間、腫瘍の中西結合治療(西洋+漢方)を研究し、肺がん、乳腺がん、脳腫瘍などに対し、豊富な臨床経験と臨床実績が認められました。
李佩文先生は中医がん治療の領域で誰でも知っている名医で、診察する時に、患者さんの細かいところまで聞きだし、時間をかけて脈診して、また特徴的な脈があれば、必ず私に脈診させて、注意点と弁証のコツを教えていただきました。李先生処方の特徴は補剤生薬と抗がん作用強い生薬のバンランスを大事に、邪気を攻めながら、正気も大事にしています。各生薬の組み合わせは絶妙で、もちろん効果も確実です。
以上の老中医のほか、北京中医薬大学付属病院の陳明教授(著明老中医劉渡舟先生の弟子)、中日友好病院中医腫瘍科の賈立群教授(消化器腫瘍、前立腺腫瘍専門)黄金昶教授(腫瘍全般)、崔慧娟教授(肺がん専門)の外来でも助手として働き、生薬のさばきや、がんの弁証などを学びました。
黄金昶先生は、肺がん、乳がん、肝、胆、膵臓がん、肉腫などを得意とし、治療成績がいいため(有効症例に参考してください)、中国各地の患者のほかに、東南アジア、韓国、台湾、欧米などの患者さんも訪ねて来られます。
复旦大学付属腫瘍病院の中西医結合科(西洋治療+漢方治療)、1956年より開設、58年の発展を経て、国家臨床重点専門科(中西医結合腫瘍科)として中国の衛生部(日本の厚生労働省に相当)より認定された。上海市の肝臓癌、膵臓癌の重点専門科でもある。
膵臓癌の研究・治療実績は国際的にも認められ、国際雑誌 Gasttoenterology、Molecular、Cancer、Oncogeneなどに多くの論文を発表された。現在、アメリカ MD Anderson腫瘍センターと共同研究も進められている。
上海中医薬大学付属龍華病院は、1960年に創立され、中国中医臨床研究基地の一つである。特に中医による腫瘍の治療において、龍華病院の強みである。
上海中医薬大学付属龍華病院は、入院患者さんに対し,西洋の抗がん剤などの治療と漢方の内服のほか、免疫力アップと副作用軽減の目的で、鍼灸・耳ツボなどの治療も取り入れています。(病状より異なるツボを使うため、むやみにまねしないてください)