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美容の発展と中医学

いつまでも若く美しく、健康でありたい。これらは古今東西問わず、女性の多くが持ち続ける願望です。中国において美容法が発展した時期を大別すると、先秦、秦漢三国、魏晋南北朝時代より隋唐時代、宋金元明清時代、現代に分けられ、その起源は二千年以上遡ることになります。

美容法の発展は、主に歴代の医家による実践によって培われ、これまでの思想や手法に現代医学を取り入れ「中医美容」として今に受け継がれています。
つまり、中医美容とは単なる美容とは異なり、中国伝統医学(中医学)の理論をベースとして、営養と疾病の治療、美容と疾病の予防の要素を併せもち、体の内外両面を重要視する思想のもと、特に美容に焦点をあてた学問です。現存最古の中医教典『黄帝内経』に書かれた経絡学説、血気学説、臓腑学説などの方面から中医美容の基礎が成り立っています。
例えば、中医学では、臓腑に疾病が生じると経絡の流れに異常が生じ、皮膚にはシワやシミ、ニキビ、他にもしびれや凝りを引き起こすとしています。このような、内部の異常は外形にあらわれるという古典の考え方に基づけば、アンチエイジングにより見た目の若さを保つには、五臓六腑、陰陽気血の機能を高めるなど、内側からのアプローチが不可欠といえます。
また、『黄帝内経』素問には黄帝と岐伯の問答形式による延命長寿の養生法が記され、その中にはこうあります。

岐伯が答えて言った。「昔の人のほとんどは養生の道理をわきまえ、陰陽に法り、術数に合せ、飲食には節度があり、労働と休息にも一定の規律があり、妄りに動く様なことはしませんでした。それゆえに肉体と精神はとても健やかで盛んであり、彼らが当然享受すべき年齢まで生きて百歳を過ぎて世を去ったのです。」

陰陽五行の変化の道理に従い、飲食を節制し、規則正しい生活をする、過労や過逸に注意する等の養生を実践することにより、形と神(肉体と精神)がともない天寿を全うすることができると説いています。

外側だけの美

技術の進歩した現代では、レーザーなどを用いてシミやイボを簡単に切除することが可能ですが、その時はきれいになっても体質が変わらなければ近いうちにまた再発し、落胆することになるでしょう。シワやたるみも同様です。シリコンを入れたり皮膚を引っ張るなど、簡単にできる処置は効果の持続も短い傾向にあります。
また、昨今の鍼灸美容においても、顔面部への物理的な刺激効果のみに終始し、内外のバランスの取れた本来の美からは逸脱した、外面のみの安易な装飾美容を重視したものが増えています。

本来の美の追求へ

当院の中医美容の実践では、外側からのアプローチはもちろん、経絡の通りを良くし、正しい飲食習慣を身に付け、質の良い睡眠や規則正しい生活習慣、楽観的な心理状態を保つなど、内側からのアプローチにも注目し、患者様それぞれの目的の実現に向け、各部門が連携し、チームで皆様をサポートします。体質から改善することで、得られた効果は長く継続することができ、本来の美を追求できます。

当院は医師をはじめ、中医師、鍼灸師、按摩師、薬膳師などが常時勤務しており、以下のような手法を用いた中医美容をご提案しています。

また、当院の中医美容の適応症には以下が含まれます。

  • シミ
  • 肝斑
  • 目の下のクマ
  • シワ
  • ほうれい線
  • 小じわ
  • たるみ(リフトアップ)
  • むくみ、小顔
  • ニキビ
  • イボ
  • 乾燥
  • 肥満
  • 痩せ過ぎ
  • 白髪
  • 抜け毛、脱毛
  • 心神症(ストレス)
  • 不定愁訴

中医学診断では必ず、今起きている症状の原因(病因)を探ることから始めます。中医美容で考えられる病因には主に以下の様なものがあります。診察やカウンセリングでは四診を用いて今のお悩みの原因を詳しく探り、弁証結果に基づき方針を打ち立てます。生薬処方や鍼灸やカッサなどの施術から、患者様に適したおすすめの方法をご提案します。

中医美容における主な病因

1.臓腑の異常(五臓)

肝・心・脾・肺・腎の五臓の中でも、中医美容で最も関わりの深いのは脾、肝、腎の3つです。五臓のひとつに問題が起こると必ず他の臓腑へも影響が及ぶため、肝と腎、肝と脾、肺と大腸、脾と胃、心と腎など、多くは複数の臓腑で問題が生じています。表面にあらわれている問題(標)と根本原因(本)を見極め適切な対処をすることで、複数の問題が同時に解消する可能性があることは、中医学の大きな特徴のひとつです。

:主運化水穀精微及水湿。在体合肌肉、主四肢、其華在口唇、開竅為口。
主に飲食と関係し、栄養状態が脾の働きを左右します。

脾の問題で見られる美容の悩み
肥満、ニキビ、むくみ、たるみ など

胃腸虚弱は肥満の元

胃腸の気が弱いと、口から入った飲食物を栄養物質に変え体の必要な場所へ運ぶ力が低下するため、食べたものがうまく活用できず停滞して「痰湿」となり肥満になります。このタイプの肥満はかた太りではなく、やわらかく全体的にぽっちゃりしているのが特徴です。
肥満の原因は、脾胃気虚や痰湿の他に湿熱、気鬱、陽虚などがあります。

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むくみは脾(胃)・腎・心に問題あり

むくみの原因には様々考えられますが、特に水分代謝と関係のある主に脾胃、腎、心と関わります。脾胃が弱いと、むくみに加え消化吸収力が低下し、胃のむかつきや胃がぽちゃぽちゃする、下痢気味などの症状を伴います。
ほかには、風邪の初期に顔面がむくむ、腎臓が弱ると排尿障害により水分が停滞して顔がむくむ、急性腎炎などの場合は急性の目のむくみ、心臓が弱ると血液循環が弱くなり心臓から一番遠い足からむくみが表れます。女性に多いむくみは、冷えによるものが多く見られ、隠れ胃腸虚弱(無自覚)により筋肉が弱く、筋肉量が少ないと熱量も少なく冷えやすい→体内の水分が蒸発しにくい、というメカニズムによりむくみが起こります。

熱+老廃物=ニキビ・吹き出物

ニキビをはじめとする吹き出物は化膿性疾患と言い、多くは熱(炎症)の問題です。熱は上へ上昇する性質を持つため、ニキビや吹き出物は顔、首、胸など上半身に集中する傾向にあります。ニキビや吹き出物は熱+老廃物により生成され、例えば、

  • 糖質、脂質の摂り過ぎ→皮脂の分泌増加→細菌の餌に
  • 肉類、菓子類の摂り過ぎ、暴飲暴食→消化器に負担→消化しきれないまま吸収→血中の異物が増加→肌荒れ
  • 辛いものの摂り過ぎ→体内に熱がこもる→皮膚の発赤、炎症

の様に、食べ物のと深く関係しています。
また、寝不足やストレスにより肝に負担がかかり、血液浄化力が低下し、老廃物溜まってニキビ、吹き出物となる場合もあります。

老けて見える最大の原因は「たるみ」

たるみの最大の原因は筋肉の衰えで、脾胃は肌肉(筋肉)を統括するため、胃腸が弱いと全身の筋肉が弱まり、顔にもたるみが現れやすくなります。たるみがあると、顔の輪郭がくずれぼんやりした印象になり、また肌も毛穴が拡がってキメが粗くなり、たるんだ顔は老けて見えるだけでなくやつれて見えるものです。
胃腸が弱いと栄養の吸収悪いため、筋肉がつきにくくなります。内臓の筋肉も弱くなり、胃下垂など内臓下垂を起こすことも珍しくありません。たるみを改善するためには、胃腸の強化が不可欠です。
さらに、水分代謝と関わる腎とも深く関わります。腎は水臓と言われ、体内の水分コントロールセンターの役割を持つため、腎が弱いと体の水分保持ができず、肌は潤いやハリを失ってたるみとなります。

舌の特徴:
舌が胖大(ぼてっと大きい)、歯痕(舌の縁に歯型がつきギザギザ)、白く厚い苔が付着するなどが見られます。

:主疏泄及蔵血。在体合筋、其華在爪、開竅為目。
肝は気血の流れを良くし、血を統括、爪や目の健康と関係します。

肝の問題で見られる美容の悩み
シミ(肝斑)、くすみ、乾燥、髪のトラブルなど。

シミの原因は紫外線、血行障害、そして老化

シミは「肝斑」と書くように肝との関係が深い肌トラブルです。
老廃物により血液が淀み、流れが悪くなると冷えや肩こりの他シミやくすみの大きな原因になります。また、老化により皮膚の代謝が衰えると色素が沈着しやすくなります。血液の浄化は肝臓で行われますが、心身の休息時、つまり寝ている間に全身から血液に集めた老廃物を浄化し、綺麗になった血液に栄養物質を与えて次の日の活動に備えるのです。つまり、ストレスにより肝の気の巡りが滞ったり、睡眠不足があると血液の浄化と再生作業が停滞し、汚れたままの血液が体中を巡ることになります。特に肝胆経の時間にあたる23時〜3時は美容のためにも質の良い睡眠を取るのが理想です。

汚れた古い血が顔色をくすませる

くすみもシミと同様皮膚の新陳代謝が低下することや、肝臓をはじめとする内臓の疲労や老化、睡眠の質の悪さと関係します。また、冷えによる血液の停滞も大きな原因の一つです。汚れた古い血液が皮膚の下を流れれば、顔色は当然透明度の低いくすんだ肌となってしまいます。見た目は全体が青っぽい、眉間やこめかみに青筋が目立つ印象となります。
顔色からわかる大まかな体の状態は、上述の青色は主に肝の問題で血の汚れによるもの、赤色は主に心の問題で体内の熱をあらわします。黄色は脾の問題で栄養不良を、白色は肺の問題で、メラニン色素の働きが低下していると考えます。黒色は腎で主にろ過機能の低下を示しています。

乾燥は肌の栄養不足

乾燥肌の大きな原因は貧血であり、肌の栄養不足によるものです。このタイプで他にも顔色が青白い、皮膚が薄い、唇や舌が白っぽい、立ちくらみや動悸、息切れしやすい、疲れやすいなどの自覚症状があれば、数値が正常であっても中医学では血虚と言い、実質的な貧血とみなして治療を行ないます。
栄養不足による肌の乾燥が長期化すると、皮膚はどんどん過敏になり化粧品や石鹸の刺激に負けやすい「敏感肌」になります

髪は血余

「血余」とは血液の一部の意味で、血液が充分にあり、隅々まで供給されていれば髪は黒くツヤがあり美しさを保つことができます。年齢とともにクセが強く出てきた、枝毛や切れ毛が多い、なども髪の栄養不足によるものと考えます。月経のある女性は特に月経で大量の血を失うため、常に血の補充を意識するのが良いでしょう。
また、豊かな髪をつくる二つ目の要素は性ホルモンです。性ホルモンを統括しているのは腎で、腎が衰えるとホルモン分泌が低下、白髪や抜け毛、薄毛などが見られるようになります。

舌の特徴:
瘀血(血の汚れ)があると舌の裏側の静脈が太く浮き出て蛇行したり、舌全体が暗く紫がかった色、舌に斑点やシミ。

:蔵精、主成長、発育、生殖。在体合骨、其華在髪、開竅于耳和前後二陰。
腎は成長発育、生殖をつかさどり、年齢に伴う様々なトラブルと深く関係します。

腎の問題で見られる美容の悩み
髪が細く白髪が多い、脱け毛が目立つ、顔の黒ずみ、顔のやつれ、耳の周りの湿疹、目の下のクマ、目力がない、まぶたのむくみ、舌に歯型がつく、舌が紅く苔が薄い(陰虚)、歯が弱く虫歯が多いなど。

腎は生命の源

水分をろ過する働きをもつ腎の機能が低下すると、老廃物が停滞し皮膚が黒ずんだ印象となります。老化は誰にでも訪れ、生まれ持った腎のエネルギー量や過度な性生活など不摂生によって腎が早く衰弱してしまうことがあります。例えば40代で上記のような症状が見られる場合は対策が必要です。

:主気、司呼吸、在体合皮、其華在毛、開竅為鼻。
肺は呼吸と関係が深く、鼻に始まり喉を通り気管、気管支、肺胞までを含みます。また、皮膚も皮膚呼吸するため範疇に入ります。
肺の主な機能は、防衛器官としての働きです。また、肺と大腸は主従関係にあり、肺が弱ると大腸にも影響が及びます。

肺の問題で見られる美容の悩み
便秘により毒素が溜まっていたり、呼吸器系に炎症があると鼻や頬のあたりにニキビ、吹き出物ができる。
皮膚トラブルが多い、顔色が白いなど。

:主血脈、主神志、在体合脈、其华在面、開穴為舌。
心は血液循環と精神面と深く関わ、血液を循環させることによって熱や水分、栄養と酸素を体の隅々へ届けます。

心の問題で見られる美容の悩み
シミ、赤ら顔、顔のほてり、顔のむくみ、多汗、爪の色が暗い など。

2.気血水の異常

1)気——肺・脾(胃)腎など臓腑の気と生まれもった精気、吸収された水穀物の気と自然界の清気によって構成されている。
正常:弾力性や張りがあり、透明感やツヤがある。
異常:たるみ、敏感肌。

2)血——現代医学の血液とは異なる。気の流れによって巡り、温め、栄養を与える働きをもっている。精神活動を支えている物質でもある。
正常:血色良好(桃色)、髪の毛はつやがあり、抜けにくい。
異常:血色不良、黒ずみ、脱毛。

3)水——上記血以外の体液の総称。体内各所を潤す働きがある。
正常:正常な津液が満ち足りている状態、目に輝きがある、肌はみずみずしい。
異常:乾燥肌、目の乾き、唇のひび割れ。疣、目蓋の腫れ、浮腫み、水太り等。

3.経絡の異常

顔面を通過する経絡は、手陽明大腸経、足陽明胃経、手少陰心経、手太陽小腸経、足太陽膀胱経、手少陽三焦経、足少陽胆経、足厥陰肝経、督脈、任脈で十本の経絡がある。

顔を通過しない経絡は——手太陰肺経——肺は体表とうぶ毛をコントロール。
足太阴脾经——脾は吸収された精気を上に運送する、血の統括。
足少陰腎経——主に髪(頭髪、陰毛、髭)で表現する。

4.労働と休息のアンバランス

働きすぎ、怠けすぎは美に影響する。

5.環境因子

冷え、暑さ、湿気、ダニ、蚊、化学染料による接触性皮膚炎の発症など。

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