不眠は、「眠れない」という夜間の苦痛だけではありません。
日中の眠気や体のだるさ、集中困難など、心と身体にさまざまな影響を及ぼします。
ストレス社会ともいわれる現代社会において、不眠を訴える人の数は年々増加しています。日本では、成人の5人に1人が何らかの不眠の症状を感じていると報告されています。
「眠れない…」と悩んでいるのは、あなただけではないのです。
不眠の原因はさまざまですが、その一つとして考えられるのが、「睡眠」と「覚醒」のバランスの乱れにあります。
眠りたい時に、何らかの理由で体を「覚醒」させる機能が、「睡眠」を誘う機能よりも上回ってしまった場合、不眠がおこるという仮説が提唱されています。
不眠症は病気と認識せずに放置してしまう人が多い傾向にありますが、うつ病(鬱病)・適応障害・不安障害と相関性があり、不眠はうつ病や不安障害などに共通してよくみられる症状のひとつです。うつ病・適応障害・不安障害を克服したければ、まずは不眠症を治療する必要があります。 しかし、自分では気づきにくい慢性的なうつ状態などの場合は、ただ生活のリズムがくるっているだけだと思い込んで不眠の問題を放置してしまい、気づいた頃には重篤化してしまうこともあるため注意が必要です。
中医学では「鬱病」の事を「鬱証」と言います。「鬱証」は、精神的抑圧から精神のバランスが崩れ、その影響で体内の「気」の流れがスムーズに流れなくなり、鬱々とした気分が続いている状態と考えます。「鬱証」の起こるメカニズムは複雑ですが、最も大きな要因となるのは肝・脾・心・腎の四臓の損傷と気血の失調です。
実際には、患者さんの不眠は、以上に示した単独の証によるものは少なく、複数の証が複雑に絡み合って生じているケースがほとんどです。治療する際にも、患者さんの個々の体質に合わせた最適な漢方薬の処方と鍼灸治療を組み合わせることで、より一層の効果が期待できます。
うつ病と診断されて当院で治療を受ける場合は、心療内科などと連携して治療を行うことが基本ですが、病状の軽減に伴い西洋薬は徐々に減薬、中止を目指します。
不安障害は、慢性的な不安・過敏・緊張・落ち着きのなさ・イライラ・集中困難などの精神症状と、筋肉の緊張・首や肩のこり・頭痛や頭重(ずじゅう)・震え・動悸(どうき)・息苦しさ・めまい・頻尿(ひんにょう)・下痢・疲れやすい・不眠(寝つきが悪い)・途中で目が覚める(眠りが浅い)などの多様な身体症状(いわゆる不定愁訴)がみられます。
パニック障害は、特に原因はないのに猛烈な恐怖感・不安感を感じ、その強い不安発作(パニック発作)を繰り返す病気です。
突然の激しい動悸(どうき)・胸苦しさ・息苦しさ・めまいなどを伴う強い不安と、死ぬかと思うほどの恐怖に襲われます。
この短期的で急性の強い不安の発作を繰り返す症状を特徴とし、一度不安発作を起こすと「また起こすのではないか」と不安になり、1人で外出できなくなったり電車やバスに乗ることができなくなったりします。
中医学では不安障害、パニック発作などは、精神的抑圧から精神のバランスが崩れ、その影響で体内の「気」の流れがスムーズに流れなくなってしまい、鬱々とした気分が続いている状態と考えます。また、気の停滞が長く続くと血の流れも悪くなります。発症のメカニズムは複雑ですが、最も大きな要因は、肝・脾・心・腎の四臓の損傷と気血の失調です。
実際には、不安障害・パニック障害は、以上に示した単独の証によるものは少なく、複数の証が複雑に絡み合って生じているケースがほとんどです。治療する際にも、患者さんの個々の体質に合わせた最適な漢方薬の処方と鍼灸治療を組み合わせることで、より一層の効果が期待できます。